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【PCAで学ぶ公益法人会計】 第2回:財務諸表の構造を理解しよう~その1

計算構造がポイント

簿記の資格を持っている方や、企業の経理部門で長くお仕事をされた方でも、公益法人会計(平成20年基準)には戸惑いを覚える方が多いという話を伺います。税理士の先生方でも公益法人を専門とされている方は非常に少ないのが実情のようです。
お恥ずかしい話ですが、私も公益法人会計を理解するまでに時間がかかりましたが、今から当時の事を振り返ると、財務諸表の計算構造を理解した事が大きな転機となった気がいたします。
勉強を始めた当初は部分的な理解が精一杯で、断片的な捉え方しかできずにおりましたが、計算構造が理解できてからは、霧が晴れたように全体像が見えしっかりと会計基準を捉えることができました。

先入観を捨てよう

あくまでも私見ですが、まったく簿記の経験がない方が公益法人会計に取り組むのは、とてもご苦労されるのではないかと思います。やはり普通の簿記からスタートされたほうが現実的ではないでしょうか。
このセミナーではある程度の簿記の知識がある事を前提にお話を進めてまいります。
しかしながら、いきなり矛盾した事を申し上げなければならないのですが、最初に捨てていただきたい簿記・会計の知識があるのです。
多くのお客様が苦労したことなのですが、簿記・会計を習った方ならだれでもが当然に知っていることを一度捨てていただく必要があり、私もまさに最初はここでつまづきました。

現金が固定資産かもしれない??

まず、資産については流動資産と固定資産に分類されますが、固定資産の考え方は企業会計とは全く異なります。
固定資産の捉え方は頭の中を一度リセットしてみてください。今まで固定資産だと思っていたものが流動資産になるかもしれませんし、流動資産であったものが固定資産に該当するかもしれません。
そして、固定資産は「基本財産」「特定資産」「その他固定資産」の3つに分類されます。

使途と保有目的

会計のイロハのイとして、最初に習う大原則「1年ルール」

流動資産1年以内に現金化される資産
固定資産1年を超えて現金化される資産

「1年ルール」では資産が現金化されるタイミングによってのみ分類がなされますが、公益法人会計では資産の使途や保有目的によって、分類することが求められています。
例えば、企業会計では普通預金は流動資産であり、その普通預金の使途や保有目的が何であろうと、流動資産であることに変化はありません。しかし公益法人会計の場合、普通預金が流動資産にあたるか固定資産に該当するかは、その使途や保有目的によって定まります。

流動資産1年以内に現金化される資産で、使途や保有目的について制限がないもの
固定資産/基本財産定款で定めた法人の骨格をなす資産、「1年ルール」は関係なし
固定資産/特定資産特定の使途や保有目的をもつ資産、「1年ルール」は関係なし
固定資産/その他固定資産1年を超えて現金化される資産で、使途や保有目的について制限がないもの

上記のリストを確認していただければわかる事ですが、固定資産の中でも基本財産と特定資産は「1年ルール」とは無関係ですので、普通預金でも固定資産になる可能性がある事になります。
そして、この基本財産と特定資産をしっかりと理解することが公益法人会計の最初のポイントとなります。次回は基本財産と特定資産についてもう少し掘り下げてみたいと思います。