公益法人会計コラム
【第12回】令和6年改正対応!新制度の主役「公益充実資金」を使いこなして公益法人の未来に備える
2026-04-23
- 令和7年施行基準
本記事は、令和7年施行の公益法人会計に基づいて情報発信をしています。
公益法人の皆様、こんにちは。株式会社シンクキューブの中川です。
前回は、令和6年(2024年)の公益法人認定法改正で導入される新しい財務ルール「中期的収支均衡(5年間のローリング判定)」の全体像についてお話ししました。
「単年度の収支相償から解放されて、もっと柔軟に活動したい!」 そんな公益法人の皆様の思いに応えるべく、今回の改正で最も注目されているのが「公益充実資金」です。本日は、この新しい枠組みの中で法人の可能性を最大限に引き出すための強力なツールについて、実務のポイントを交えながらやさしく深掘りしていきましょう。
■ なぜ新制度で「公益充実資金」が生まれたの?
これまでの「収支相償」のルールでは、単年度で利益(剰余金)を出すことが厳しく制限されていました。そのため、「数年後の大きな事業や設備投資のために資金をプールしておきたい」と思っても、なかなか計画的な資金づくりが難しいというお悩みがあったかと思います。
そこで令和6年の制度改正では、法人の皆さまが将来の社会課題へ機動的に対応できるよう、「将来の公益目的事業のために計画的に資金を蓄積できる仕組み」が創設されました。これが「公益充実資金」です。

■ 魔法の仕組み:「みなし費用」で収支をコントロール
公益充実資金の最大の特徴は、実際の支払いがまだ発生していなくても、積み立てた時点で中期的収支均衡の計算上「費用(みなし費用)」として扱われる点にあります。
この資金は、以下のようなサイクルで運用していきます。
- 貯めるとき(積立) 将来の公益目的事業のために資金を積み立てると、その年度の収支判定において「費用」としてマイナス計上できます。これで、単年度の剰余金を適切に圧縮しつつ、未来への投資原資を確保できます。
- 管理するとき(使途拘束資産のメリット) 積み立てた資金は「使途拘束資産」として扱われます。旧制度でいう「遊休財産(新制度では『使途不特定財産』)」の保有上限額の計算からは除外されるため、保有制限のペナルティを気にせず安心してプールしておけます。
- 使うとき(取崩) いざ事業のために資金を取り崩して使った場合は、判定上の「収入」としてプラス計上し、収支のバランスを調整します。

■ 実務の注意点!「減価償却費の二重計上」を防ぐ計算ロジック
ここで、経理担当者様が実務上とても気をつけなければならない「計算のロジック」を一つ押さえておきましょう。
公益充実資金を取り崩して、事業用の建物や車両などの「公益目的保有財産」を買ったとします。この資産は、その後何年かにわたって「減価償却費」として会計上の費用が発生しますよね。
しかし、中期的収支均衡の判定では、この減価償却費は「費用から除外(控除)」しなければなりません。
なぜなら、お金を積み立てた時(あるいは資産を買った時)に、すでに「みなし費用」として収支をマイナスにしているからです。その後の減価償却費まで費用に入れてしまうと、「ひとつの財産に対して二度も費用を計上してしまう(ダブルカウント)」ことになり、計算が不当に歪んでしまうのです。 少しややこしいですが、「一度費用枠を使ったものは、償却費には入れない」と覚えておいてくださいね。

■ 新公益法人会計基準の影響:開示と事務負担の軽減
新しい公益法人会計基準では、おなじみの「正味財産増減計算書」という名前が、より親しみやすい「活動計算書」へと変わります。煩雑だった振替処理なども廃止され、少しスッキリします。
また、公益充実資金の動きや実質的な収支のバランスは、新設される「財務規律適合性に関する明細(新別表A)」などでしっかり開示して、社会に透明性を示す必要があります。
この「新別表A」は、従来の別表Hなどの役割を引き継ぐ、いわば新しい通信簿のようなものです。単なる数字の羅列ではなく、「公益充実資金へいくら積み立てたか」「減価償却費をどう調整したか」「結果として5年間のバランスは取れているか」といった一連の計算プロセスを分かりやすく一覧で示します。これを通じて、法人が「将来のためにどう資金をやりくりしているか」というストーリーを、行政や社会に堂々と説明できるようになります。
ただし、小規模な法人様等には、事務負担への配慮も用意されています。 具体的には、法人の状況に合わせて以下のような軽減措置が設けられています。
- 会計監査人を置いていない法人様の場合
- 「新別表A」の作成省略と、あえて作成するメリット: 財務諸表の附属明細書として、正式な明細書類を作成する「義務」は免除されます。しかし、行政庁への毎年の定期提出書類(電子システム)では、結局のところ「収入・費用の総額」「積立額・取崩額」「年度剰余額」などの詳細な計算結果をデータで入力して報告しなければなりません。 つまり、報告のための正確な集計作業そのものは無くならないのです。 ここで少し、私自身のこれまでの経験からお話しさせてください。担当者様独自のExcelや私的なメモで計算過程を残されているケースをよく拝見しますが、第三者や後任の方が見たときに「どうしてこの数字になったのか理解が難しい」「必要な情報が足りていない」ということが往々にして起こります。少し厳しい言い方になってしまいますが、属人的なメモは「資料としての質が十分に担保されていない」ケースも多いのです。 そこで、あえて標準的な「新別表A(附属明細書)」のフォーマットに乗せて資料を作成・保管しておくことを強くお勧めしています。標準フォーマットであれば、誰の目にも計算の根拠が明らかになり、将来の引き継ぎも格段にスムーズになります。内部管理の質を高める意味でも、非常に賢く、前向きな選択としてぜひご検討いただきたいポイントです。
- 会計処理の簡便化(複雑な計算の省略): 本来であれば、将来のキャッシュフロー予測など複雑な計算が必要な「減損会計」や、専門家による数理計算(割引率など)が求められる「退職給付引当金」の算定について、特例が認められています。たとえば退職給付引当金なら、「期末に全員が自己都合で退職したらいくら必要か」という単純な計算で済ませるなど、よりシンプルで実務負担の少ない方法(簡便的な取り扱い)を選ぶことができます。高度な専門知識がなくても、日常の経理の延長で対応しやすくなっています。
- 収益事業等を行っていない法人様の場合
- 貸借対照表の内訳表の省略: 貸借対照表を事業ごとに細かく分ける(区分経理)作業を省略し、決算時の事務負担を軽くすることができます。(※活動計算書の内訳は引き続き必要です)

■ まとめ:法人の「潜在力」を解き放ち、未来を描こう
公益充実資金は、予測が難しいこれからの時代において、公益法人の皆さまが自らの意思で「内部留保」を活用し、活動の最大化を図るための心強い味方です。
令和7年(2025年)4月の新制度スタートに向けて、まずは「数年後にどんな事業を展開したいか」「そのためにいくら積み立てていくか」という、未来の設計図を描くところから始めてみてはいかがでしょうか。
次回も、実務に役立つ最新情報をお届けします。どうぞお楽しみに!
新しい制度は、公益法人の皆様が事業活動を
拡大するチャンスでもあります。
私たちシンクキューブは、皆様がこの変化をスムーズに乗り越えられるよう、
システムの面から全力でサポートさせていただきます。
新制度への移行に向けた「システム相談」を随時承っておりますので、
どうぞお気軽にご相談ください。