公益法人会計コラム
【第10回】活動を正しく伝えるための「間接費の配賦」
2026-04-09
- 令和7年施行基準
本記事は、令和7年施行の公益法人会計に基づいて情報発信をしています。
公益法人の皆様、日々の業務本当にお疲れ様です。株式会社シンクキューブの中川です。
前回の事業区分に続きまして、今回は、「間接費(共通経費)の配賦」について一緒に考えてみたいと思います。
法人の活動においては、特定の事業だけにかかる費用もあれば、複数の事業や法人全体の運営にまたがって発生する費用がありますが、この共通して発生する経費(間接費)をどのように振り分けるかが、今回のテーマです。
■ なぜ「配賦」が重要になるのでしょうか?
令和6年に策定された新しい会計基準では、「公益目的事業」「収益事業等」「法人運営」の3つの区分で経理を管理するわけですが、ここで共通経費を恣意的に分けてしまうと、各区分の正しい収支が見えなくなってしまいます。
配賦の不備は、単に計算上の問題にとどまらず、「公益目的事業比率」や「中期的収支均衡」といった大切な指標の算定根拠を歪めてしまう可能性があります。 さらに、この配賦は法人の「税務申告」にも影響を与える可能性がある点にも注意が必要かと思われます。収益事業等の法人税を計算する際、共通経費をどのくらい振り分けるかで利益(所得)の金額が変わってくるため、税務上の観点からも適切な配賦を行っていくことが求められそうです。
そのため、間接費の適切な配賦は、法人の透明性を高め、社会に対する説明責任を果たすためのとても重要なプロセスと言えそうです。

■ どのように分ける?「合理的な基準」と「継続性」
では、具体的にどのように費用を振り分ければよいのでしょうか。 基本となるのは、「費用の発生と便益の関係」(その費用が、どの活動のためにどれくらい役立ったのか、という繋がりですね)を論理的に説明できる、合理的な基準となります。代表的なものとして、以下のような基準が考えられます。
- 従事割合: 役職員の皆様の業務時間などに基づき配分します。人件費などを分ける際の、最も代表的な基準と言えそうです。
- 使用面積: 事務所の利用面積などに基づき配分します。家賃や光熱費などの振り分けに向いています。
- 利用者数・処理件数: サービスの受益者数や伝票の枚数などに基づき配分します。
客観的に説明できる指標を選ぶことが大切ですね。そして、一度選んだ配賦基準は、正当な理由がない限り「毎期継続して」使うことが求められています。収支の調整などのためにコロコロと基準を変えることは、控えるべきだと思われます。

■ 費用だけじゃない?資産・負債や収益の配賦ルール
ここまで共通経費のお話をしてきましたが、費用だけでなく「資産・負債」や「共通の収益」についても考える必要があります。
- 共用の資産・負債: 複数の事業で使う資産や負債についても、可能な限り特定の会計への物理的な跡付けを行うことが求められます。もしそれが困難な場合は、使用割合などの適正な基準を使って配分していく形になります。
- 共通の収益(共通受取会費や寄付金など): 法人内のルールで配賦基準が設定されている場合は、各会計に配賦したうえで、その基準を注記に記載することになります。
- 他会計振替: 例えば、収益事業会計から公益事業会計へ活動資金を移動させるような場合ですね。これを「寄付金」や「売上」といった収益・費用の科目で処理してしまうと、法人全体で合算したときに架空の数字が膨らんでしまいます。そのため、こうした会計区分をまたぐお金の移動は、「他会計振替額」という専用の勘定科目を使って、「あくまで法人内のポケット(区分)間の移動ですよ」と記録していく形になります。
■ 分けるのが難しい場合の「例外ルール」
とはいえ、日々の実務の中では、厳密に配賦するのがどうしても難しいケースもあるようです。そうした場合のために、実務上の負担を考慮した例外的なルールも用意されています。
- 公益と収益のどちらか迷い、配賦が困難な場合 ⇒ 「収益事業等」の費用へ
- 事業と法人運営で迷い、配賦が困難な場合 ⇒ 「法人運営(管理費)」の費用へ
このように、優先的に計上する区分が定められています。ただし、これはあくまで「合理的な基準の設定が実務上不可能、または過大な事務負担を強いる場合」に限られるため、安易な適用は避けていただいたほうがよいかもしれません。
■ 注記で開示する「事業費及び管理費の形態別区分」
新しい基準では「計算書の本表はシンプルに、詳細は注記で説明する」という設計思想がとられています。公益法人会計基準においては、この配賦に関する詳細を「事業費及び管理費の形態別区分」という注記項目の中で開示していくことになります。
具体的には、以下のような内容の記載になります。
- 各会計区分別の形態別費用額 役員報酬、給料手当、減価償却費といった科目(形態別分類)ごとに、各区分に計上された費用額を一覧にします。法人の実情に合わせて、「公1」「公2」のように事業別に細かく分けることも認められているそうです。
- 採用した配賦基準 共通経費を配賦した場合、その科目ごとに「従事割合」や「面積比」といった具体的な基準を明記する欄が設けられています。
- 具体的な配賦額と配分状況(脚注) 表の枠外などで、「共通費用120,000円を公益10:法人2で配分」といった具体的な配分状況を補足します。
- 活動計算書(P/L)との整合性 この注記表の各費用の合計額は、活動計算書の本表にある「公1事業費」や「管理費」などの金額と、必ず一致するように作成する必要があるようです。

■ 小規模法人様への留意点
また、小規模な法人様(会計監査人設置法人以外)向けの負担軽減措置として、貸借対照表の区分経理(内訳の作成)を省略できる簡便法もあります。しかし、この方法を選ぶと、特定の財産以外がすべて「公益目的事業財産」とみなされることになります。将来的に財産の使い道に制約がかかる結果となる可能性もあるため、制度を利用するかどうかは少し慎重に検討していただいたほうがよいかもしれません。
少し手間に感じられる間接費の配賦計算ですが、その影響範囲を考えると、重要な会計処理であると言えそうですね。

新しい制度は、公益法人の皆様が事業活動を
拡大するチャンスでもあります。
私たちシンクキューブは、皆様がこの変化をスムーズに乗り越えられるよう、
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